◇本会設立趣旨書(2016年1月29日、NPO法人設立総会にて承認)◇

国家や地域の境界を超えて、地球規模で人、物、資金や情報の移動が拡大し、相互依存が深まるグローバル化か進展しています。経済分野においては、国際的分業の進展、企業の海外進出や多国籍企業の展開がすすむ中で、一国における問題が世界に影響を及ぼすなど、その依存関係はより深まっています。
一方で、経済的な格差の拡大と貧困問題は現在世界が直面している鏝大の地球規模課題であり、その解決に向けたグローバルなコミットメントが求められています。平成27年(2015年)9月に開催された第70回国連総会では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、新たに策定された17ゴール(Sustainable Development Goals : SDGs)では貧困撲滅、不平等の是正、持続可能な生産消費形態の確保、これらを実施する上でのグローバル・パートナーシップの活性化などが掲げられました。

フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することによって、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指すものであり、その理念は、環境・貧困・人権・平和・開発など地球規模の課題解決に貢献するものです。また、わたくしたちの暮らしを見つめ直し、交流の促進や賑わいの剔出にもつながるものです。フェアトレードの理念が広く理解されることで持続可能な生産消費形態が促進し、身近な“買い物”を通して地球規模課題一経済的な格差の拡大と貧困問題-の解決に貢献できるのです。
フェアトレードを中心とした「まちづくり」がフェアトレードタウン活動です。フェアトレードタウンでは、フェアトレード産品をまちぐるみで積極的に購入・調達し、まちをあげてフェアトレードの促進に努めています。 2001年にイギリスのガースタンプで初めて誕生して以来、現在では、世界ですでに27力国1700以上もの自治体などがフェアトレードタウンとして認定されています。

日本でも、近年、フェアトレードについての認知度が上がってきたものの、フェアトレード産品扱い店はまだまだ少なく、欧米諸国などと比較するとフェアトレードが十分に普及しているとはいえません。平成23年(2011年)6月に熊本市が日本・アジアで最初のフェアトレードタウンとして認定されました。 日本において、フェアトレードの認知度をさらに高め、フェアトレードの理念をより一層広げることで、多くのフェアトレードタウンを実現していくことが今後の課題となっています。

名古屋では、平成8年(1996年)5月にフェアトレード産品取扱い専門店「風”S」が誕生すると同時にフェアトレードを推進する市民団体「GAIAの会」(代表:土井ゆきこ)が発足し、講演・講座・国際理解教育・映画上映・コンサートを開催するなど、早くからフエアトレードの理念を広げる活動がなされてきました。平成13年(2001年)にはフェアトレード&エコショップ「オゾン」が開店し、平成18年(2006年)2月にはオゾンを事務局とする「中部フェアトレード振興協会」(代表:杉本正次)が発足しました。さらに、平成21年(2009年)6月にはGAIAの会を母体とする「名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会」(通称:なふたうん)が誕生し、同年12月には「フェアトレードタウンなごや推進委員会」(代表:原田さとみ)が発足し、平成22年(2皿O年)2月からはNPO法人アジア日本相互交流センター(現、認定NPO法人アイキャン)がフェアトレード啓発を目的とした「東海フェアトレードフォーラム」を実施するなど、フェアトレード普及やフェアトレードタウン実現に向けた活動が活発になされるようになりました。

平成23年(2011年)11月、名古屋をフェアトレード・タウンにしよう会が呼び掛け人となり、若者や市民、NPO/NGO、教育関係、企業、行政らが広く集う場として「名古屋にフェアトレードを広めるための会議」が開催されました。会議を隔月で1年間積み重ね、中部フェアトレード振興協会、フェアトレードタウンなごや推進委員会、認定NPO法人アイキャンの主要3団体とも連携し、新たに多くの人々の賛同を得て、平成25年(2013年)1月に任意団体「フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)」を発足しました。

FTNNでは、毎年5月の世界フェアトレード・デー・イベント、環境デー、名古屋まつり・エシカル・デー・イベント、消費生活フェアなど市内各所で開催されるイベントでフェアトレードをPRするとともに、フェアトレード産品取扱店MAPやフリーペーパー「惣」を発行するなど、フェアトレードの認知度向上と定着に向けた活動を続けてきました。また、フェアトレード産品取扱店が多数出展するフェアトレード・ツキイチ・マルシェを名古屋テレビ塔前で毎月開催し、身近な“買い物”を通して地球規模課題の解決に貢献できる機会を設けるとともに、さまざまなテーマの地域イベントとも連携を図ることで多様な人々との接点づくりにも取り組みました。平成26年(2014年)11月に名古屋で開催された「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」にも出展し、会場を盛り上げるなど、地域へ貢献してまいりました。一方で、隔月で定例会を開催し、フェアトレードに関心のある幅広い人々に参加を呼び掛ける等、情報共有やネットワークづくりを行いました。さらに、小中学校や高等学校での出前授業や、各地域の生涯学習センターが主催する社会教育講座において、国際理解教育によるフェアトレードへの興味・理解などを推進する活動も地道に重ねてきました。

これらの取り組みの結果、平成27年(2015年)3月10日には名古屋市議会による“フェアトレードの理念の支持に関する決議”が全会一致でなされ、同年5月9日には名古屋市長による“名古屋市がフェアトレードを支持する”表明を得て、名古屋市がフェアトレードタウンとして認定されるための基準を全て満たすことができました。そこで、FTNNとしてフェアトレードタウン認定の申請を一般社団法人・日本フェアトレードフォーラム(FTFJ)に行い、平成27年(2015年)9月19日にFTFJから“名古屋市および市民のみなさん”ヘフェアトレードクウン認定証が授与され、名古屋市は日本で二番目のフェアトレードタウンとなりました。また同日、名古屋市長とFTNN代表による“国際フェアトレードタウンなごや宣言”への調印式を行い、「市民一人ひとりの買い物を通じて、“地球とのフェアトレード”により、まちぐるみでフェアトレードを推進し、地域の絆を深めるため、互いに協力していくこと」を宣言しました。今後は、名古屋におけるフェアトレードのさらなる普及と、将来にわたるフェアトレードタウン認定の維持に向けて、「みんなでやろみやあ!フェアトレード!」を合言葉に、引き続き活動を継続・発展させてまいります。

今回、法人化を申請するに至った理由は、任意団体として実践してきた活動や事業をさらに地域に定着させ、3年毎に行われるフェアトレードタウン認定の更新審査に対して継続的かつ安定的に対応していくために、法人化による組織的な強化が必要であると判断したためです。また、名古屋を中心とする名古屋大都市圈のより多くの市民、NPO/NGO、学校、企業、行政の方々に参画していただき、行政や関連団体との連携をさらに深めていくうえで、特定非営利活動法人格を取得するのが最適であると考えました。
私たちは、特定非営利活動法人格を取得し、“国際フェアトレードタウン名古屋”を将来的にも発展させていくことで、若者や市民一人ひとりが身近な“買い物”を通して地球規模課題の解決一第70回国連総会「持続可能な開発目標」(SDGS)の達成に貢献できる、市民が誇りに思える、魅力と活力にあふれる、国際的に開かれたまちづくりを進めます。さらに、日本・アジアにおけるフェアトレード交流ネットワークの中心都市としで歴史に残る街・ナゴヤ”の実現に貢献していきます。

(NPO法人設立発起人代表 原田さとみ)

名古屋市「「フェアトレードタウンなごや」の認定について